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多発性嚢胞腎(ADPKD・ARPKD)

多発性嚢胞腎とは

多発性嚢胞腎は、両側の腎の皮質、髄質に多数の嚢胞(のうほう:分泌液がたまって袋状になったもの。水泡。)をできてしまい、実質(皮質と髄質)が繊維状に容量を減少させてしまう疾患です。

腎臓に嚢胞ができることに病的な意味はあまりありません。腎臓の嚢胞は尿細管の一部が膨らみ尿の成分に近い体液がたまってしまうことで、10人中3人程度の方に1~2個の腎嚢胞があるとの調査もあり体に害を及ぼすことは多くありません。ただし、大きくなって腹部を圧迫したり、血尿の原因になることもあります。また、まれではありますが腎腫瘍を伴うことがありますので、腎嚢胞があると診断された場合は専門医の診断を受けるべきでしょう。

多発性嚢胞腎は、嚢胞が常染色体優性遺伝をする嚢胞腎、autosomal dominant polycystic kidney disease; ADPKDと、常染色体劣性遺伝をする嚢胞腎、autosomal recessive polycystic kidney disease; ARPKDに分類されます。

常染色体優性遺伝嚢胞腎
(Autosomal Dominant Polycystic Kidney Disease:ADPKD)

[疫学]

ADPKDは、羅患率が約1,000~2000人に1人に発症し、遺伝性腎疾患の中で最も頻度が高いものです。腎嚢胞の多発と、腎実質の萎縮、繊維化により機能ネフロン数が減少し、患者の半数は60歳代までに終末期腎不全となります。病理像としては糸球体の硬化像、尿細管の萎縮、間質の繊維化を認め、また炎症細胞浸潤も認められる。腎臓以外の嚢胞形成としては、肝嚢胞を60~70%に認め、女性、腎機能が低下している患者に多い。膵臓、卵巣、甲状腺に嚢胞を認めることがあります。20%の患者に頭蓋内動脈瘤を認め、また家族に動脈瘤がある場合は可能性が高くなります。脳動脈瘤破裂は、比較的若年者に多くみられますので、スクリーニングが必要です。腎不全の進行する前に、50-75%の患者に高血圧が確認され、レニン-アンギオテンシン-アルドステロン系の活性化による腎血漿流量の低下と、腎血管抵抗が増大することが報告されています。また心臓超音波検査で30%程度の方に心臓弁膜の機能異常が発見されます。心肥大、冠動脈疾患および、嚢胞感染による敗血症も注意を要する合併症です。

患者の約8割は、第16染色体短腕上の遺伝子PKD1の異常により発症します。残りのほとんどは、第4染色体長腕上の遺伝子PKD2の異常を原因としています。他にも少数例ですが、これ以外の遺伝子異常により発症する例もあります。PKD2遺伝子異常家系は、PKD1遺伝子異常家系に比べ、腎不全の進行が遅いlate-onset型であり、予後用語集へが比較的良好であるといわれています。遺伝浸透率はほぼ100%と考えられていますが、家族に病歴のない散発例もめずらしくありません。

[治療]

腎実質が萎縮することによってネフロンが減少し、腎機能が低下します。現在これを止めたり、抑止するために確立された治療法は現在ありません。しかし最近の研究により腎不全と嚢胞が大きくなることを防ぐことが期待される薬剤が見つかりつつあり、当科を含めた専門施設で臨床治験・研究が始まっております。また高血圧、尿路感染は、腎不全の危険性を増すためにも治療が必要です。

日常生活においては、水分を多く取るようにすることが大切です。

帝京大学病院泌尿器科での取り組み

  • 24 時間蓄尿により正確に腎機能を評価します。
  • MRI などで現在の腎臓の大きさを評価します。
  • 家庭で血圧測定をしていただき、高血圧の評価をします。
  • 動脈硬化の検査を行います。
  • 心臓超音波検査、脳 MRI により、心臓機能に異常がないか、また脳動脈瘤がないか調べます。
以上の結果から、適切な治療を行っていきます。

外来担当医

  • 堀江重郎 月・水 午前
  • 武藤 智  月・金午前