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帝京大学医学部附属病院
泌尿器科

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治療法・手術法

膀胱がんに対する新膀胱造設術(回腸新膀胱造設術)

浸潤性膀胱がんで根治手術を施行される患者様に対する尿禁制型代用膀胱、特にorthotopic neobladder(新膀胱)はストーマ管理を必要とせず患者様のQOL 向上が得られるため、回腸導管に替わって尿路変更・再建術式の主流となっています。われわれは新膀胱再建に回腸を利用しStuder 法にて行っています。現在まで30 例に新膀胱造設術を行いました。一般的に年齢の上限に関しては75 歳程度が目安となっていますが、絶対的禁忌ではありません。当科でも新膀胱作成の最高齢は77 歳です。

われわれの新膀胱の特徴として、新膀胱尿管吻合はWallace 法にて輸入脚口側端と端側吻合しています。Wallace 法では尿管膀胱逆流を認めるため、術後の腎盂腎炎を合併症としてよく指摘されますが、われわれの経験では全例に逆流および細菌尿を認めますが、水腎症も認めず術後6 ヶ月以内に腎盂腎炎にて発熱をきたした症例は30 例中1 例(3.0%)しかありません。つまり低圧の新膀胱でさえあれば、逆流があったとしても腎盂腎炎を惹起するものではないと考えています。

しかし、新膀胱を造設した患者様の約15% は何らかの排尿困難を有するとされています。排尿とは蓄尿状態の膀胱から尿が持続的に排泄され、最終的には膀胱が空になる経時的な運動であり、排尿のどの段階に問題があるか経時的に直接的に観察することはきわめて重要です。現在まで排尿時のDynamic な膀胱、尿道の動きを知ることができるのは、排尿時膀胱造影のみとされてきました。しかし、排尿時膀胱造影は膀胱尿道内皮の形態学的変化の情報であり、膀胱筋層ならびに周辺臓器の動きについては全く情報がありません。排尿は膀胱だけではなく尿道および尿道括約筋、周囲筋および臓器の協調運動であり、正確な排尿状態の把握には骨盤内臓器全体の排尿時の経時的な動きの把握が不可欠です。そこでわれわれは排尿時にreal time MRI を行うことで、尿路だけでなく周囲骨盤内臓器の経時的な動きを総合的に把握することが可能と考えました。正常症例5 例をコントロールとし、新膀胱造設症例5 例でreal time MRI を行いました。飲水およびfurosemide 内服後コンドーム型シースをペニスに装着し、側臥位にて撮影します。尿道の膀胱開口部からペニス内にいたる尿道を含む平面(矢状断に近い平面)にて3 秒ごとに撮像し、撮影は排尿にタイミングを合わせ、排尿開始から終了まで行いました。内尿道

口(内尿道括約筋)および膀胱頂部の経時的移動座標を解析しました。膀胱頂部の横軸方向の動きは、新膀胱、正常膀胱ともに尾背側方向に向かい、移動距離は新膀胱20.0±19.9 cm、正常膀胱15.0 ± 8.4 cm で、両者間に有意差はありませんでした。縦軸方向も, 新膀胱26.6 ± 14.3 cm、正常膀胱23.6 ± 16.3 cm とこれも両者間の移動距離に有意差はありませんでした。次に膀胱出口部の動きですが、新膀胱、正常膀胱ともに動きの方向は頭腹側方向に動きますが、横軸方向においては、正常膀胱で-3.6 ± 4.3 cm しか動かないのに対して新膀胱では-13.4 ± 1.5 cm、縦軸方向では正常膀胱が-2.0 ± 6.5 cm に対して新膀胱が-10.6 ± 0.5 cm といずれも有意に大きく動きました。つまり、膀胱頂部は新膀胱、正常膀胱共に尾背側にほぼ同じように収縮します。膀胱出口部は新膀胱、正常膀胱ともに頭腹側方向に動きますが、新膀胱の方がよりdynamic な動きにより排尿することがわかりました。従来は新膀胱では主に腹圧による新膀胱の圧迫で排尿すると考えられていましたが、われわれの検討により腹圧による膀胱頂部だけでなく、膀胱出口部のdynamic な動きも新膀胱の排尿に寄与していると思われます。この検討は欧州泌尿器科学会誌であるEuropean Urology に掲載されました。

回腸新膀胱造設術

新膀胱造設の一般的適応

  1. 年齢:年齢の上限に関しては75歳程度が目安となっていますが、絶対的禁忌とはなりません。当科でも新膀胱作成の最高齢は75歳です。実際、少数例同士の比較ではあるが、日本人で新膀胱を作成された75歳以上の群と未満の群において早期や晩期の合併症、尿禁制率に有意差はなかったと報告されています。
  2. 腎機能:尿禁制型の尿路再建では、尿再吸収が回腸導管よりも問題となります。したがって、この補正のため腎機能は正常であることが望ましいとされていますが、膀胱がんのために腎機能が低下している症例では手術により腎機能の回復が期待できるため新膀胱の適応です。
  3. 尿道再発:男性膀胱がん症例においては尿道にがんが存在しないことが絶対的な必要条件となります。

手術

  1. 手術数日前より食物残渣の少ない特別食を召し上がっていただき、手術前日から絶食となります。また手術前日には腸をきれいにする下剤を服用していただきます。
  2. 手術は全身麻酔にて行います。ほとんどの場合硬膜外麻酔を併用しますが、これは除痛にも有効であるため術後約1週間は使用します。
  3. 皮膚切開は腹部正中におき膀胱全摘除術と尿路変更術を行います。
  4. 術後状態が安定していれば、翌日にはベットサイドにて歩行の練習を始めます。このとき、われわれ泌尿器科担当医だけでなく、看護師、リハビリ科医師もお手伝いします。

新膀胱の作り方

  1. 膀胱全摘後の尿路変更として回腸新膀胱を造設します。
  2. 約45-55cmの回腸を切り離します。
  3. 口側と肛門側の回腸と回腸を縫い合わせ、消化管としての連続性を保ちます。
  4. 遊離した回腸は口側7cmを残して、残りを切り開きます(脱管腔化)。
  5. 脱管腔化した腸管はU字に並べ内側の腸管壁同士を縫い合わせます。
  6. 次にU字の下端を上方へ折り返し袋となるように縫い合わせます。
  7. こうやって縫い合わせた袋状の新膀胱に約1cmの穴を開けます。
  8. この穴と、膀胱前立腺摘除後の尿道の切れ端を縫い合わせます。
  9. 2本の尿管を縫い合わせ1本にします。
  10. 先ほど切り開かなかった口側の断端と、尿管を吻合します。

術後の排尿状態

  1. 膀胱容量は術後2ヶ月で200ml程度ですが、6ヶ月目に400ml程度となり安定します。
  2. それに伴い、失禁もほとんどなくなります。術後6ヶ月目以降に失禁を認める方は、約10%程度です。

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